高倉健の死後、世間を最も騒然とさせたのが、晩年に養子縁組を結んでいた小田貴月の存在である。十数年にわたり身の回りの世話を担い、名優の最期を看取った彼女が語るエピソードは、それまで誰も知ることのなかった日常の高倉健の人間味を伝えている。
一方で、長年苦楽を共にしたスタッフや実の親族への配慮を巡り、相続の手続きや記念碑・記念館をめぐる構想が複雑な展開を見せたことも事実だ。かつて江利チエミとの別離を選び、晩年には新たな信頼関係のなかで生涯を閉じた彼の選択には、今なお多様な視線が注がれている。最後まで私生活を晒さず、美学を貫こうとした男の切実な祈りがそこにあった。