連続テレビ小説『マッサン』では、ドラマ的緊張感を高めるために現実の出来事が大きく再構成された。劇中の鴨居商店や住吉酒造といった企業群は、実在の企業や人物をモチーフにしつつも、視聴者の感情移入を誘うストーリーラインへと組み替えられている。
テレビドラマという媒体の特性上、分かりやすい敵対関係や劇的な離別劇が必要とされる。しかし、現実の竹鶴と鳥井の関係は、単なる愛憎や対立にとどまるものではなかった。契約満了に伴う円満な退社であり、鳥井は竹鶴の独立後も陰ながら支援を送り、竹鶴もまた鳥井の恩義を終生忘れなかったとされる。テレビ画面上の「演出されたドラマ」と「史実の人間関係」との落差が、歴史を知るファンや関係者に違和感を与え、激怒説を裏付ける言説として広まった側面は否定できない。