キントリの真骨頂は、天海祐希とベテラン俳優陣が醸し出す絶妙なアンサンブルにあります。登場人物たちの関係性を整理した緊急取調室の相関図の中心にあるのは、確固たる信頼関係です。
管理官としてチームを統括する梶山勝利役の田中哲司、人心掌握術に長けた「仏の善さん」こと中田善次郎役の大杉漣(故人)、元マル暴で強面ながら人情味あふれる「ナベさん」こと渡辺鉄次役のでんでん、元頭脳派刑事「うつやん」こと小石川春夫役の小日向文世。この個性派おじさんデカたちと真壁有希子が繰り広げる居酒屋での反省会や軽妙な掛け合いは、重厚な事件パートと対をなす作品の大きな魅力です。さらに、大杉漣の急逝後に画像解析のスペシャリスト・玉垣松夫として加わった塚地武雅や、捜査一課の刑事ペア「もつなべコンビ」(速水もこみち、鈴木浩介)の存在が物語に厚みを与えています。
そして、この見事な人間模様を支えているのが、日本屈指の脚本家・井上由美子の手腕です。『白い巨塔』や『昼顔』など人間の深層心理をえぐる名作を手がけてきた井上由美子は、取調室の録画システム(可視化)という客観的装置を逆手に取り、被疑者と取調官が本音と嘘をぶつけ合うスリリングな会話劇を構築。単なるトリック暴きではなく、「なぜその罪を犯さなければならなかったのか」という人間の哀哀を浮き彫りにする脚本が、10年にわたるロングヒットの根幹を支えています。