晩年の火野正平を語る上で欠かせないのが、NHK BSで長年放送された『日本縦断 こころ旅』だ。相棒のチャリオ(自転車)とともに日本全国を走り、視聴者から寄せられた手紙の思い出の地を訪ねる旅ドキュメンタリー。NHKの看板番組として世代を超えて愛されたこの番組で見せた彼の姿は、飾らない人柄そのものだった。
街で出会うお年寄りや子どもたちと気さくに言葉を交わし、時に弱音を吐きながらペダルをこぐ。その自然体の魅力に、多くの視聴者が胸を打たれた。過酷なロケ旅を支えたのは、体調管理に気を配り、遠くから彼を見守る妻の存在だった。ロケの合間には頻繁に自宅へ連絡を入れ、日々の出来事を楽しそうに報告していたというエピソードも残っている。