そもそも、なぜニットを一般的なTシャツやジャケットと同じようにハンガーへ掛けてはいけないのでしょうか。その原因は、テキスタイルの物理構造にあります。織物(布帛)が縦糸と横糸を隙間なく交差させているのに対し、ニット(編物)は一本の糸で連続したループを形成しています。伸縮性に優れる反面、下方向への引っ張り応力に極めて弱く、ハンガーの細いバーと肩先の一点に衣服全体の重量が集中すると、ループ構造が不可逆的に引き伸ばされてしまうのです。
ニットを通常通りに吊るす収納を行うことで生じる代表的なデメリットは以下の3点です。
第1に、ハンガーの両端が編み目を内側から押し広げることで発生する「肩ポコ(ハンガー跡)」です。一度編み目が伸びきってしまうと、着用時に肩パッドが入っているかのような不自然な突起が残ります。
第2に、「着丈と袖丈の不可逆な伸び」です。特にウール100%やカシミヤ、アクリル混紡のヘビーウェイトなセーターほど、自重によって1シーズンで着丈が3〜5cm以上も伸びてしまい、身幅が細く縮んで本来のシルエットが崩壊します。
第3に、「首回りのヨレと伸び」です。襟ぐりにかかるテンションがリブ編みの弾性を奪い、だらしなく広がってしまいます。