「市」を書く際、多くの人が一瞬戸惑いを覚える最大のボトルネックは、下半身を構成する市部首巾(はば・はばへん)の筆順にあります。ここには、人間が無意識に陥りやすい視覚的・構造的な錯覚が存在します。
漢字の筆順原則には「外側を先に囲み、中身を入れてから最後に閉じる」という規則(例:「国」「日」など)や、「左右対称の文字は中央を先に書く」という規則(例:「小」「水」「山」など)が存在します。「巾」という形状を見たとき、脳が「左右対称だから真ん中の縦棒が先ではないか」と勘違いし、第3画として中央の長い縦画を走らせてしまうエラーが頻発するのです。
しかし、正しい巾の書き順は以下の3ステップです。
- 左の縦画(第1画)
- 上の横から右へ折れ曲がる画(第2画)
- 中央を上から下に貫く縦画(第3画)
つまり、「外枠の骨組み(左・右折れ)を先に作り、最後に中央の心柱を通す」のが絶対的なルールです。これが「市」に組み合わさった場合、全体の3画目=巾の1画目、4画目=巾の2画目、5画目=巾の3画目となります。市書き順間違いやすいポイントの約7割は、この「5画目の心柱を3画目に書いてしまう」フライング現象に集中しています。中央を貫く画は「最後の仕上げ」であると覚えることが、誤記を防ぐ決定打となります。