物語の幕開けは、ある自動運転車の暴走事故から始まる。犠牲者は、かつて世間を騒がせた元官僚。警察は単なるシステムエラーとして処理しようとするが、一人の若き捜査官がその裏に潜む「意図的なプログラム改ざん」の痕跡を見つけ出す。そこから、巨大な陰謀の歯車が回り始めるのだ。
東野圭吾の筆致は相変わらず冴え渡っている。専門的なIT用語を難解に語るのではなく、読者の日常に地続きの恐怖として落とし込む手腕は見事としか言いようがない。私たちは便利さと引き換えに、一体何を差し出しているのか。その問いが、静かに、しかし確実に胸に突き刺さる。