この菓子の誕生を語るうえで外せないのが、関ヶ原の戦いで敵中突破を成し遂げた戦国屈指の猛将・島津義弘だ。鹿児島には、義弘公の遺徳を偲び、鹿児島城下から日置市伊集院町の徳重神社(旧妙円寺)までの往復約40キロを鎧武者姿などで歩いて参拝する「妙円寺詣り」という伝統行事が息づいている。
過酷な道のりを歩き抜く武士や参拝客たちの疲れた体を癒やし、貴重なエネルギー源となったのが、茶店で振る舞われた白い蒸しまんじゅうだった。丸に十文字の焼き印は、単なる意匠ではなく武士たちの団結と誇りの象徴。地域の郷土史・伝統食文化がそのまま形になった奇跡の銘菓であり、400年以上の歳月を経た現在も、その文化的価値は色あせるどころか輝きを増している。