なぜここまで過剰な競争が生まれてしまったのか。事態の経緯解説を試みると、プラットフォームの進化と現代人の生活様式の変化が密接に絡み合っている。
1990年代から2000年代にかけては、料理研究といえば専門学校や海外留学を経て、雑誌やテレビの厳しい審査を通過した一握りのエリートたちの独壇場だった。彼らは綿密な試作を繰り返し、栄養バランスや再現性を追求していた。しかし、スマートフォンが普及し、誰もが1分以内で見られる動画を求めるようになったことで、価値基準が「美味しさの深み」から「視覚的なインパクトと手軽さ」へと完全に置き換わった。
結果として、ニンニクや化学調味料を大量に投入する「バズレシピ」が市場を席巻する。短時間で脳を刺激する料理が評価される環境下で、愚直な研究を重ねてきたベテラン勢と、瞬発力で数字を稼ぐ新世代クリエイターとの間に埋めがたい溝が生まれたのだ。