自己責任論が蔓延し、常に「もっと成果を」「もっと自己投資を」と駆り立てられる現代社会。そこでは、弱さや悲しみは克服すべき欠陥として扱われがちだ。しかし、この古代の思想は、自らの無力さや喪失感を抱える状態そのものに価値を見出す。
「悲しむ者は幸いである、その人たちは慰められる」という一節は、痛みを無理にポジティブシンキングで覆い隠すのではなく、傷つきやすさ(ヴルネラビリティ)を受け入れることの大切さを説く。現代の心理療法やマインドフルネスの潮流とも驚くほど親和性が高い。成功者だけが勝つゼロサムゲームに息苦しさを覚えた人々が、この逆転のロジックに救いを見出すのは必然と言えるだろう。