米問題は一体なぜ起きたのか。スーパーの品薄や価格高騰が続いた背景には、天候不順や買い占めといった偶発的要素だけでなく、行政の需給見通しと対応の遅れが明確に影を落としています。
供給逼迫の火種が燻る中、流通業界や自治体首長からは、政府が管理する「政府備蓄米」の市場放出を求める切実な声が相次ぎました。100万トン規模で保管されている備蓄米を放出すれば、心理的不安による仮需を鎮静化できると期待されたためです。しかし、農林水産省は「民間在庫は全体として確保されており、新米の出回りによって需給は引き締まりから緩和へ向かう」「不当な放出は米価の下落を招き農家経営を圧迫する」として、放出要請を一貫して退けました。
この農水省の強気な静観姿勢は、結果として市場の不安心理を増幅させることになります。卸業者や中食・外食企業は「米が本当に手に入らなくなる」との危機感から原料確保に奔走。新米の集荷をめぐって前代未聞の争奪戦が繰り広げられ、生産現場での集荷仮払金にあたる概算金は前年比で20〜40%以上も急騰しました。行政が市場介入によるメッセージを発信しなかったことが、サプライチェーン全体での価格押し上げを加速させた皮肉な現実があります。