火野さんの役者人生において、晩年の代表作となったのが2011年にスタートしたNHK BSの紀行番組『にっぽん縦断 こころ旅』でした。
視聴者から寄せられた「こころの風景」にまつわる手紙を読み、相棒の相棒自転車「チャリオ」に乗って現地を訪ねるスタイルは、14年間で1200日以上におよぶ旅路を記録。過酷な坂道に「もう嫌だ」と愚痴をこぼしながらも、出会った地元の人や動物たちと屈託なく触れ合う姿が、老若男女問わず圧倒的な支持を集めました。
番組で見せたのは、台本に縛られない自然体の火野正平その人でした。手紙の切ないエピソードに静かに涙を流し、美しい景色に息をのむ。テレビという枠を超えてお茶の間と心を通わせた旅は、日本のテレビ史に残る名企画として語り継がれています。