昭和から令和初期にかけて、三角筋中部に強烈な刺激を入れるコツとして「ダンベルを持ち上げるときに小指を親指より高くする」というフォームが推奨されてきた。覚えている読者も多いだろう。だが、2026年現在の解剖学において、この動きは「インピンジメント(衝突)を自ら引き起こす危険行為」として明確に否定されている。
腕を内旋(内側にねじる)させた状態で上腕骨を外側へと挙上すると、肩甲骨の突起部分である「肩峰」と上腕骨頭の隙間が極限まで狭まる。その狭窄部に棘上筋の腱や滑液包が挟み込まれ、慢性的な炎症を引き起こすのだ。「肩を鍛えるたびに引っかかり感や鈍痛がある」という人は、まさにこの古い神話の犠牲者と言える。現代の正解は、手首を完全にニュートラル(手の甲が上またはやや斜め前)に保ち、関節に自然なゆとりを持たせることだ。