物語の軸となるのは、三十代半ばの中年作家・竹中時雄と、文学を志して上京してきた女弟子・横山芳子の関係だ。
時雄は平凡な結婚生活と創作の停滞に倦み焦がれていた。そこへ現れた若い芳子は、彼にとって新時代の象徴であり、鬱屈した日常を照らす光に見えた。時雄は自らの家に芳子を同居させ、師として指導を始める。だが、その内面で渦巻いていたのは、純粋な師弟愛などではない。抑えきれない性的欲求と所有欲だった。
暗雲が立ち込めるのは、芳子に京都の学生・田中秀夫という恋人がいることが発覚してからだ。時雄は猛烈な嫉妬に狂う。道徳や師としての立場を盾に取り、二人の仲を強引に引き裂こうと画策。しかし、芳子の愛は揺るがない。最終的に父親が連れ戻しに来る形で芳子は故郷へ帰り、時雄の浅はかな企みは脆くも潰れ去る。