1970年代末期、ロボットアニメといえば勧善懲悪の子供向け番組が常識だった時代に、安彦良和氏が手掛けたキャラクターデザインは極めて革新的でした。虫プロダクション出身の実力派として頭角を現していた安彦氏は、単なる記号的な美男美女ではなく、思春期の揺らぎや疲弊、内面の葛藤が表情や立ち姿に滲み出るような造形を追求したのです。
主人公アムロ・レイの内向的な縮こまり方、シャア・アズナブルが仮面の奥に秘める冷徹さと貴種流離譚の哀愁、そしてセイラ・マスが見せる気品と憂い。これらの生々しい人物描写は、安彦氏の流麗な描線とポージング設計によって初めて成立しました。制作現場において、安彦氏はアニメーションディレクター(作画監督)として全話数の原画を自ら修正・監修するという超人的なハードワークを敢行。当時の関係者証言によると、安彦氏の机には修正原画が山のように積まれ、睡眠時間を削りながら画面のクオリティを死守していたと伝えられています。
しかし、その過酷な制作環境は肉体を蝕み、テレビシリーズ終盤の第30話前後で激しい過労により無念の入院を余儀なくされます。メインスタッフ不在となった終盤の作画崩壊と、劇場版三部作(1981年〜1982年)での大規模な新作カット描き下ろしによる劇的なクオリティ復活という一連のドラマは、ファンの間で伝説の機動戦士ガンダム 制作秘話として語り継がれています。