山形県内陸部、とりわけ村山地方を発祥とする「だし」は、過酷な農作業を乗り切るために農家が編み出した知恵の結晶です。本場山形郷土料理だしの由来経緯を辿ると、諸説あるものの、農繁期の多忙な合間に素早く作って食卓に「出す」こと、あるいは夏野菜の旨味を余すところなく引き「出す」ことが語源と伝えられています。
山形盆地の夏はフェーン現象の影響を受け、最高気温が40度近くに達することも珍しくありません。体力を激しく消耗する過酷な気候下で、畑から収穫したばかりのきゅうりや茄子を手早く刻み、醤油をかけて白米や豆腐に乗せて掻き込むスタイルは、まさに生きるためのファストフードでした。
地域に根差した山形伝統野菜だし豆腐栄養効果の観点も見逃せません。山形県内で古くから栽培されてきた「民田茄子(みんだなす)」や「薄皮丸茄子」は、皮が薄く果肉が締まっており、生食してもアクが少ない特徴を持ちます。茄子に含まれるナスニン(アントシアニン系色素)の高い抗酸化作用や、みょうがに含まれるα-ピネンによる覚醒・血行促進効果は、過酷な暑熱環境下における自律神経の乱れを整える働きを担ってきました。伝統野菜の持つ生命力と先人の生活知が、豆腐という普遍的な大豆食品の上で見事に融合した歴史的背景があります。