「動画の読み込みが頻繁に止まる」「オンライン会議で自分の映像だけがカクつく」といった不満の背景には、オカルト的な噂ではなく、極めて物理的なインフラ構造の制約が存在します。ケーブルテレビのネットが遅い決定的な理由は、幹線部分に光ファイバーを使いつつも、電柱の保安器から各戸の宅内までは従来の同軸ケーブル(メタル線)で引き込む「HFC(Hybrid Fiber Coaxial:光ハイブリッド)方式」が長年採用されてきた点にあります。
通信規格として普及している「DOCSIS 3.0」や「DOCSIS 3.1」では、下り(ダウンロード)速度こそ理論値1Gbps前後に引き上げられたものの、テレビ信号との帯域競合を避けるために上り(アップロード)帯域が極端に狭く設計されています。その結果、公称下り320Mbpsや1Gbpsのプランであっても、上り最大速度がわずか10Mbps〜50Mbps程度に制限されるケースが珍しくありません。
これに対し、電柱の分岐点から室内の光回線終端装置(ONU)まで完全に光ファイバーケーブルのみで直結する「FTTH(Fiber To The Home)方式」の光回線では、上り・下りともに1Gbps〜10Gbpsの対称帯域が確保されます。同軸ケーブルとFTTHの通信速度差は単なる数字の優劣にとどまらず、家族が同時に動画を視聴したり、クラウドストレージへバックアップを送信したりした瞬間に、回線全体が飽和するかどうかの決定打となります。