米倉涼子が公の場で初めて深刻な体調不良を告白したのは2019年のことでした。診断された病名は低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)。脳と脊髄を保護している髄液が硬膜の裂け目などから漏れ出し、髄液圧が低下することで脳が下垂し、多岐にわたる神経症状を引き起こす難治性の疾患です。
発症当時の症状は極めて凄惨でした。起立時に耐え難い激しい頭痛やめまいに襲われ、視界が定まらず、「自分が真っ直ぐ歩いているのかすら分からない」という空間識失調に近い状態に陥りました。当時のインタビューや手記において、彼女は「起き上がることすらできず、常に車酔いと二日酔いが同時に襲ってくるような感覚」「光を見るのも辛く、暗闇の中で横になり続けるしかなかった」と生々しく振り返っています。
常に完璧なパフォーマンスを求められるプレッシャーの中、華やかなスポットライトの裏で身体の自由を奪われていく恐怖は計り知れません。周囲に心配をかけまいと気丈に振る舞う一方、病態の解明が進んでいない疾患特有の「周囲から痛みが理解されにくい孤独」とも戦い続ける日々を余儀なくされました。