入江美樹さん(本名:小澤ベラ、旧姓:入江)は、1944年生まれ。ロシア人の父親と日本人の母親の間に生まれ、日本人離れした彫りの深い美貌とスラリとしたプロポーションで、1960年代の日本のファッション界を席巻した伝説的なトップモデルです。
雑誌『装苑』のカバーガールをはじめ、名だたるデザイナーのミューズとしてパリやニューヨークのランウェイでも活躍。1960年代後半には映画界からも熱烈なオファーを受け、勅使河原宏監督の映画『他人の顔』(1966年)に出演するなど、女優としても将来を嘱望されていました。その圧倒的な存在感は、現在のハイファッションモデルの先駆者としてファッション史に刻まれています。
転機となったのは、1968年の小澤征爾さんとの結婚でした。世界へ羽ばたこうとしていた新進気鋭の指揮者を支えるため、入江さんは自らの華やかな芸能キャリアを潔く手放し、完全なバックステージへと回る道を選びます。当時の小澤さんは海外公演で多忙を極め、生活基盤のほとんどが欧米にありました。入江さんは言葉や文化の異なる異国で家庭を守り、食生活の徹底した管理や健康管理、多忙を極めるマエストロの精神的支柱としてその音楽人生を支え抜きました。
その後、長女の征良さん、長男の征悦さんに恵まれ、子育てが一段落してからは個人事務所の代表として、征爾さんのマネジメントや著作権管理、さらには自身が手掛けるアンティークショップやデザイン関連の事業など、実業家としての才覚も発揮しました。小澤さんが2010年に食道がんを公表して以降、肺炎や腰の手術など幾多の健康不安に見舞われた際も、成城の自宅で献身的な看護を続けたことは、近隣住民や音楽関係者の間でも深く知られています。