マクドナルド、ロッテリア、すき家、デニーズ、バーガーキングなど、世界中の名だたる飲食チェーンのコーポレートカラーや看板には、例外なく赤と黄色が多用されています。マーケティング業界で「ケチャップ&マスタード理論」と呼ばれるこの現象には、人間の本能を直接刺激する3つの心理・生理的メカニズムが作用しています。
第1に、強烈な食欲増進効果です。赤色は交感神経を刺激して血流を促進し、脈拍や体温をわずかに上昇させる働きがあります。一方の黄色は、消化器系の働きを活発にし、胃液の分泌を促す色覚刺激を持ちます。この2色が網膜から大脳視覚野に届いた瞬間、脳は無意識に「エネルギー摂取」「甘味や旨味の anticipation(期待)」を連想し、空腹感を強く自覚するようにプログラムされています。
第2に、視認性(見つけやすさ)と誘目性(引き寄せられる力)の最大化です。黄色は全色相の中で最も「明度(明るさ)」が高く、暗がりや遠方からでも瞬時に輪郭を捉えられます。赤色は波長が最も長く、網膜上で実際よりも手前に飛び出して見える「進出色」です。この2つが並ぶことで、時速60kmで走る車内からでも、数百メートル離れたロードサイドの看板を一瞬で認識させることが可能になります。
第3に、顧客回転率のコントロールです。赤と黄色の高彩度な暖色空間に身を置くと、人間は時間の経過を実際よりも長く感じる「時間感覚の加速(タイムワープ現象)」が起こります。結果として、顧客は無意識に「そろそろ店を出よう」と感じ、長居することなく席を空けます。低客単価・高回転率を生命線とするファストフードビジネスにおいて、赤と黄色は利益を最大化するための最も合理的な空間装置なのです。