焼き台の前に立つのは、店主の濱田充氏だ。彼の手に握られているのは、最高峰と名高い紀州備長炭。その高い火力と、均一で柔らかい遠赤外線を自在に操り、鶏肉の表面を一瞬で焼き固めて旨味を閉じ込める。
火床の温度は部分によって異なる。濱田氏はうちわ一本で風を送り込み、数センチ単位で炭の配置を微調整する。肉が爆ぜる音、滴る脂が炭に触れて立ち上る煙の薫香。五感を研ぎ澄ませた職人の手が、完璧なタイミングで串を反転させる。焦げ目ひとつにも計算が尽くされており、口に入れた瞬間に広がる肉汁の爆発力は、一度体験すれば忘れられない強烈な記憶として刻まれる。