2026年現在、日本の煙草市場は加熱式デバイスが8割以上のシェアを占めるまでに至った。匂いが残らず、煙が出ないことが正義とされる社会空間において、紙巻きタバコは明確な肩身の狭さを強いられている。だが、皮肉にもその「均一化されたクリーンさ」への反動が一部の若い層で起きている。
誰もが似たようなスタイリッシュな加熱式デバイスを手に持ち、無機質な蒸気を吐き出す光景。それに物足りなさを感じた層が求めたのが、視覚的にも嗅覚的にも圧倒的な主張を持つ嗜好品だった。一目でそれと分かる黒い巻紙、そして空間を一変させる甘いアロマ。不便さや目立ちやすさすらも、個性の表明として肯定的に捉え直されているのだ。