彼女の店が特別な場所となった理由の一つに、大手映像プロダクションや放送局のキーマンたちが集う拠点だった点が挙げられる。特に東映の映画監督やプロデューサー、そしてテレビ朝日系のスポーツ中継・ドラマ制作チームの面々は、毎夜のように看板の火が消えた後も議論を戦わせていた。
企画書段階のアイデアが、彼女の目の前で何度も揉まれ、削られ、生まれ変わった。時には、泥酔した大物監督とプロデューサーの取っ組み合いの喧嘩を、彼女が一言で収めたという逸話も残っている。「明日のヒット作」は、立派な会議室ではなく、タバコの煙が充満するカウンターの上で生まれていたのだ。
テレビ朝日が手掛けた歴史的なプロレス中継やアクションドラマの裏で、どのような駆け引きが行われていたのか。業界のパワーバランスや表には出ないキャスティングの裏事情まで、彼女の記憶には日本のエンターテインメント史の裏ページが鮮明に刻まれている。