作中で最も読者の涙腺を刺激した「晴れ」と「朝日」のエピソードは、海沿いの集落で新年を迎える旅の一幕です。原作漫画では第3巻第25話「新年の祭」、マッドハウスが手掛けたテレビアニメ版では第14話「若者の特権」において圧巻の映像美とともに描かれました。
極度の朝寝坊として知られるフリーレンが、早朝から始まる新年祭の「日の出」を見るため、フェルンに無理やり起こされて不承不承海岸へと向かいます。眠気眼をこすりながら水平線を眺めるフリーレンの脳裏に去来したのは、80年以上前、ヒンメルたち勇者一行とまったく同じように眺めた朝日の記憶でした。
かつてのフリーレンは、ヒンメルから「君にこの景色を見せたかったんだ」と語りかけられても、「別に…ただの日の出だよ」と淡白に返答していました。しかし、年月を経てフェルンから「綺麗ですね」と無邪気に微笑みかけられたとき、フリーレンの口から自然とこぼれ出たのは「そうだね」という共感の言葉でした。空が晴れ渡り、黄金色の陽光が海面を照らす瞬間、過去と現在が完璧にシンクロする演出は、映像・音楽・脚本のすべてが高い次元で融合した名シーンです。