1971年、毎日新聞社から出版された加賀まりこの写真集『私生活(Private)』は、当時の出版界および芸能界に鮮烈な衝撃を与えました。カメラマンを務めたのは、日本の広告写真界・ポートレート界のトップランナーとして名を馳せていた立木義浩です。
当時、女優がヌードを披露することは現在以上にセンセーショナルなスキャンダルとして扱われがちでした。しかし、この作品は商業主義的な扇情性とは一線を画していました。朝目覚めてからベッドで過ごす気怠い時間、タバコをくゆらせる仕草、部屋の中を気ままに歩き回る自然体の姿など、「加賀まりこの飾らない素の瞬間」がドキュメンタリータッチで贅沢に収められています。
撮影秘話として知られているのは、過度なポージングをあえて排し、2人の間に流れる研ぎ澄まされた緊張感と信頼関係の中でシャッターが切られたという点です。立木義浩による陰影豊かなモノクロームと洗練されたカラーの構図は、ヌードを「プライベートな空間における究極の自己表現」へと昇華させ、写真表現史に残るモニュメントとなりました。