英マンチェスター大学の研究チームは、スーパーコンピュータを用いてティラノサウルスの骨格構造と筋肉量を完全再現した精密なシミュレーションを実施しました。この検証が明らかにしたのは、ティラノサウルスの最高速度は時速約15〜27km(中央値でおよそ時速20km)が限界という現実です。
速度を制限していた決定的な理由は、骨強度(骨の破壊耐性)にあります。成体のティラノサウルスは体重が約6〜9トンに達します。この超重量級の生物が時速30km以上で走ると、両脚が空中に浮いて着地する瞬間に、大腿骨や脛骨(けいこつ)へ凄まじい衝撃荷重がかかります。
計算上、時速40km以上で走るためには全身の筋肉量の80%以上を下肢に集中させなければならず、それは生物学的に不可能です。仮に無理やり疾走させた場合、着地した瞬間に骨が粉砕骨折し、転倒して致命傷を負ってしまいます。つまりティラノサウルスは「足が遅かった」というよりも、「自らの巨体と骨の強度が許す安全限界速度が時速20km前後だった」というのが科学的な真実です。