近年の東京の景観変貌を語る上で欠かせない金字塔が、虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業である。30年以上の歳月をかけて細分化した権利を統合し、圧倒的なスケールで結実した麻布台ヒルズ開発プロジェクトは、都市再生の歴史におけるターニングポイントとなった。この壮大な事業の思想的根底には、かつて「垂直のガーデンシティ」を提唱し、都市の高層化と緑地の保全を両立させようとした森稔の強い信念が息づいている。
また、建築デザインの面で世界的な注目を集めたのが、木材をはじめとする自然素材と現代建築を融合させる名匠・隈研吾らの参画だ。伝統的な日本の美意識を巨大構造物に落とし込むアプローチは、単なるコンクリートの巨塔に過ぎなかった都市空間に新たな文化的価値を注入した。
麻布台で確立された「高層化による空地率の上昇と緑化」という都市モデルは、今や都心各地で進行するあらゆる再開発のひな型となった。しかし、この理想的なモデルを他のエリアにそのまま適用しようとする試みは、予期せぬ壁に突き当たっている。