青井阿蘇神社の最大の見どころは、2008年(平成20年)に熊本県内の建造物として初めて国宝に指定された5棟の社殿群です。現在の社殿は、相良藩初代藩主・相良頼房公と重臣・相良清兵衛らの手によって、慶長15年(1610年)から18年(1613年)にかけて造営されたもの。桃山時代の豪壮華麗な建築様式と、球磨地方独自の伝統技法が融合した唯一無二の意匠を誇ります。
ひときわ目を引くのが、高さ約12メートルにおよぶ茅葺きの「楼門」です。急勾配の優美な茅葺き屋根と、重厚な木組みのコントラストは圧巻の一言。軒下の四隅には、それぞれ表情が異なる「鬼面」が彫り込まれており、全国的にも極めて珍しい「人吉様式」と呼ばれる独特の彫刻を見ることができます。阿形(あぎょう)・吽形(うんぎょう)の表情を浮かべる鬼面は、参拝者を災厄から守る魔除けの象徴とされています。
楼門をくぐり抜けると、拝殿・幣殿・廊・本殿が一直線に連なる壮麗な空間が広がります。急勾配の茅葺き屋根で統一された社殿の随所には、極彩色の彫刻や黒漆塗りの意匠、精巧な金具が施されており、戦国から江戸初期の気風を色濃く残す建築美に誰もが息を呑むはずです。