メリットが存在する一方で、医師や管理栄養士が最も懸念しているのが塩分過多のリスクと注意点です。これこそが、安易な大量摂取を絶対に避けるべき決定的な理由と言えます。
重曹の化学名は「炭酸水素ナトリウム($NaHCO_3$)」であり、分子構造の中に多量のナトリウムを含んでいます。化学計算上、重曹1gには約274mgのナトリウムが含まれており、これを食塩相当量に換算すると約0.69gの食塩に匹敵します。「体に良いから」と1日に小さじ2〜3杯(約6〜10g)もの重曹を溶かしてガブガブと飲んでしまうと、それだけで4〜7g近い食塩を水分から無自覚に摂取することになります。
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」において、成人の1日あたりの食塩摂取目標量は男性7.5g未満、女性6.5g未満(高血圧患者では6.0g未満)です。通常の食事だけでも目標値を超過しやすい日本人が、重曹クエン酸水を日常的に過剰摂取すれば、瞬く間に深刻な塩分過剰へ直結します。
塩分の過剰負荷は、体内の水分バランスを崩し、血圧の上昇や浮腫(むくみ)を引き起こすだけでなく、腎臓への負担や副作用を加速させます。血液中の余分なナトリウムをろ過・排出し続ける腎臓にとって、持続的な高ナトリウム負荷は糸球体に多大なストレスを与えます。特に慢性腎臓病(CKD)の潜在患者や高齢者が無思慮に飲み続けた場合、腎機能の低下や代謝性アルカローシスを引き起こす危険性があるため、決して軽視できません。
さらに見過ごせないのが、歯のエナメル質への影響です。クエン酸はpHが低く酸性度が強いため、重曹との配合比率が崩れてクエン酸過多になった水溶液を長時間かけてちびちび飲んだり、飲用直後に歯磨きをしたりすると、歯の表面のエナメル質を溶かす「酸蝕歯(さんしょくし)」の原因になります。飲用後は水で軽く口をゆすぐ、ストローを使って歯に直接触れにくくするなどの物理的な自衛策が不可欠です。