ネット上の情報では「モルタルは水を吸うと脆くなる」「ひび割れたら上からモルタルを塗れば直る」といった単純化された言説が散見されますが、これらには現場工学的な誤解が含まれています。
まず、「モルタルを厚塗りすればコンクリート並みに強くなる」という認識は完全な間違いです。モルタルは厚みを持たせるほど水和熱と乾燥収縮の応力が集中し、内部から自己破壊的なクラックを引き起こします。モルタルの一度塗りの限界厚さは約15〜20mm程度とされており、それ以上の厚みが必要な床面施工には、必ず骨材の入ったコンクリートを用いなければなりません。
また、経年劣化によって発生するひび割れ補修とクラック補修材の選び方にも明確な基準が存在します。ひび割れはその幅によって対処法が完全に分かれます。
- ヘアクラック(幅0.3mm未満・深さ4mm未満):構造への影響は軽微。微弾性フィラーやセメント系のエマルジョン補修液を刷毛やスプレーで表面に擦り込むだけで防水性を回復可能。
- 構造クラック(幅0.3mm以上・深さ4mm以上):内部の鉄筋腐食や地盤沈下の恐れあり。表面にモルタルを撫で付けるだけでは再発するため、ディスクグラインダーで溝をV字またはU字にカットし、シーリング材を充填した上でエポキシ樹脂系やポリマーセメント系の注入材を高圧注入する本格的な改修が必要。
ひび割れの深層原因を見極めずに表面だけをモルタルで隠す補修は、内部の劣化を進行させるリスクがあるため注意が必要です。