大地震の前に現れるとされる代表格が「地震雲」や「ペット・野生動物の奇妙なパニック」です。これらは学術的に「宏観異常現象(こうかんいじょうげんしょう)」と呼ばれ、古今東西で数多くの目撃談が語り継がれてきました。しかし、結論から言えば、現代の地震学および気象学において地震雲の特徴とされる形状と地震発生の直接的な因果関係は科学的に証明されていません。
雲は大気中の温度、湿度、気圧、風の乱れによって形成される気象現象であり、数千メートル上空の雲が地下十数キロメートル以深の断層破壊を事前に察知して特異な形状を取るメカニズムは立証されていないのが現状です。日本国内で地震は日常的に発生しているため、「珍しい形の雲を見た後にたまたま揺れた」という偶然の一致が、人間の確証バイアスによって強い結びつきとして記憶されるケースがほとんどです。
一方で、動物の異常行動に関しては、岩盤が破壊される直前に発生する微弱な電磁波の乱れや、人間が感知できない微細な初期微動(P波)、あるいは地下からの微量なガス放出を敏感に察知しているのではないかという仮説に基づき、国内外の研究機関で観測実験が続けられてきました。一部の実験環境下で生体反応の変化が確認された例はあるものの、それを「いつ・どこで・どの規模の地震が起きるか」という実用的な予測指標として活用できる水準には達していません。