京都と奈良。ともに日本を代表する古都でありながら、その風情は驚くほど異なる。格子戸が連なる洗練された町並みと華やかな文化が息づく京都に対し、奈良の魅力は圧倒的なスケール感と手つかずの自然、そして深遠な静寂にある。
1993年にユネスコ世界文化遺産に登録された「古都奈良の文化財」を構成する社寺は、どれも広大な敷地を持ち、空が広い。吉城川の流れや春日山原始林の緑に囲まれた境内に足を踏み入れると、都市の喧騒は一瞬で消え去る。かつて聖武天皇が平城京に大仏を建立し、国の安寧を祈った天平時代の熱気が、静かな時の流れの中にいまも優しく溶け込んでいる。じっくりと時間をかける寺社仏閣巡りにおいて、このどこか大らかでゆったりとした空間は、多忙な現代人の心を解きほぐす最高の処方箋となっているのだ。