本作の緻密なトリックと重厚な警察組織の心理描写は、まさにミステリー界の二大巨頭のイズムを感じさせる。館ミステリーの先駆者である綾辻行人が仕掛けるような本格的な密室の謎解きと、横山秀夫が描く組織と人間の泥臭い確執。この二つの要素が見事に融合した脚本は、角川書店から刊行された原作小説の時点でも絶賛を集めていた。
警察内部の思惑と温泉街に巣食う古くからの因習が絡み合う中で展開されるクライム・サスペンスは、単なる犯人捜しの枠組みを軽々と超えていく。サスペンス・ミステリーとして最高峰の完成度を誇る本作は、論理的な謎解きの快感と、人間の業を描き切るドラマ性の両立に成功しているのだ。