成田演じる「魔王」の対極として、物語の感情線を牽引したのが未谷千晴役の小芝風花だ。ハードワークと過酷な人間関係で心を病み、言葉を発することすら困難になった冒頭の姿から、徐々に自らの足で歩み出すまでの心理描写は圧巻の一言に尽きる。ノーメイクに近い素朴な表情で打ちひしがれる姿には、画面越しでも息が詰まるほどの現実味が宿っていた。
多くの視聴者が千晴に自分自身を重ね合わせたのは、小芝が持つ卓越した共感力と、感情の機微を拾い上げるナチュラルな表現力があったからにほかならない。厳しい現実に打ちのめされ、涙を流しながらも食らいつく千晴の成長軌跡は、単なるシンデレラストーリーではなく、泥臭い自己執着の果てに掴み取ったリアルな生存戦略として記憶されている。