ネット上で「埼玉のレトロ自販機が全滅した」と誤解される最大の要因は、かつて全国区の知名度を誇った2大巨頭の劇的な没落と方針転換にあります。その筆頭が、行田市下忍の国道17号バイパス沿いにあった伝説のドライブイン「鉄剣タロー」の完全閉店です。
映画監督・園子温氏の映像作品『TOKYO TRIBE』のロケ地としても知られ、映画ファンやサブカルチャー愛好家のアイコンでもあった鉄剣タローは、2026年5月31日をもって約32年に及ぶ歴史に幕を下ろしました。閉店直後からネット上では様々な憶測が飛び交いましたが、報道各社および関係者の証言によると、決定的な鉄剣タロー閉店理由は複合的なトリプルパンチでした。
1つ目は、主客層であった長距離ドライバーの運行ルート変更に伴う慢性的な客数減少。2つ目は、1970年代から稼働し続けていた自販機本体の致命的な故障と代替電子パーツの調達不可能化。そして3つ目が、建物の深刻な老朽化と世界的な未曾有の感染症拡大による営業自粛要請の直撃でした。名物だったチーズバーガー自販機やトーストサンド、うどん自販機の灯が同時に消えたショックは全国に広がり、これが「埼玉の聖地崩壊」という強烈な印象を焼き付けたのです。
さらに、久喜市栗橋東の国道125号線沿いに位置する「オートパーラーまんぷく」の動向もファンの危機感に拍車をかけました。まんぷくはかつて上尾と並び立つ名所でしたが、機械の心臓部である加熱機構や搬出ソレノイドの度重なる故障により、トーストサンドやめん類の自販機が相次いで稼働停止。現在はゲームコーナーと一般的なカップ麺自販機、アイス・飲料自販機などを中心とした業態へと移行しています。「自販機が消えた」という現地レポートがSNS上で拡散されたことで、閉店の噂が独り歩きしていったのです。