ドラマのキャスティングにおいて、お笑い芸人が重要な役どころに抜擢されるケースは少なくない。しかし、その多くは「物語の清涼剤」としてのコミカルな役回りか、あるいは物語の序盤で退場するゲストキャラクターであることが多い。物語のすべての謎を回収する「真犯人」という最重要ポストに芸人を据えるのは、極めて異例の決断だった。
制作サイドが求めたのは、視聴者に「まさかこの人が」と思わせる絶対的な意外性と、リアリティのある狂気だったという。美形俳優やベテラン怪優が演じる犯人像には、どこかフィクションとしての記号性が伴う。しかし、お茶の間に浸透している「せいや」という親しみやすいアイコンが殺人鬼に変貌することで、物語は一気に視聴者の現実世界へと侵入してきたのだ。このキャスティングの成功は、日本のテレビドラマ史における一つの発明だったと言える。