この革新的な器具が最も華々しく脚光を浴びたのが、1964年東京オリンピック施設建築プロジェクトである。日本を代表する建築家である丹下健三は、国立代々木競技場の設計にあたり、世界の観客を迎える最先端の建築美と極めて合理的な動線計画を融合させた。その設計思想の一環として、同競技場の女性トイレ内には数十台におよぶサニスタンドが整然と配置されたのである。
開会を前にした報道陣向けの内覧会やNHKのニュース番組でも、この未知の設備は「オリンピックを象徴する合理的で衛生的なトイレ」として大々的に取り上げられた。和服から洋服へと生活様式が変化しつつあった当時の女性たちにとって、靴を脱がずに短時間で利用できる近代的な衛生環境は、まさに日本の未来像を象徴する空間体験として提示されたのだった。