エスカレーターを降りた瞬間、熱気と匂いに包まれる。地下の食品フロアは、まるでヨーロッパの市場のような熱気で満ちあふれていた。目につくのは、大量生産された既製品ばかりではない。多摩地域の農家から毎朝届く無農薬野菜や、高尾山麓の醸造所で作られたクラフトビール、地元で長年愛される老舗和菓子店の限定商品がずらりと並ぶ。
「以前は都心のデパ地下を模倣した品揃えが中心でした。しかし今の客が求めているのは、どこでも買える高級品ではなく『ここでしか出会えない物語』です」と、フロア担当のMD(マーチャンダイザー)は語る。2026年の消費潮流は、完全にローカル回帰へと舵を切った。地場産の採れたて野菜を手にとる主婦の横で、若い世代が地元産の原料を使ったスイーツを品定めする。流通の壁を越えた新鮮な地産地消の循環が、この巨大な地下空間で日常的に回っている。