万全を期したつもりでも、保存環境の急変や食材の偏りによって腐敗が進んでしまうケースは想定しておかなければなりません。食べる直前に必ず確認すべき「腐敗の兆候」を整理します。
腐敗が進んだ食品には、明確な五感のサインが現れます。第一に「視覚」です。箸を入れた際におかずやご飯が納豆のように糸を引いている、表面に白っぽく濁ったぬめりがある、食材の輪郭が崩れてドロドロしている場合は即座に廃棄してください。第二に「嗅覚」です。蓋を開けた瞬間に鼻を突く酸っぱい臭い(酸臭)、ツンとするアンモニア臭、あるいはアルコールが発酵したような異臭が漂う場合は菌が大量増殖しています。第三に「味覚・触覚」です。口に含んだ瞬間にピリピリとした刺激や酸味、苦味を感じた場合は、決して飲み込まずに吐き出し、口をゆすいでください。
しかし、現代の衛生管理において最も恐ろしいのは「味も臭いも変化しない食中毒菌」の存在です。黄色ブドウ球菌が産生する毒素「エンテロトキシン」や、セレウス菌の嘔吐毒は、食品中で菌が増殖しても腐敗臭や酸味をほとんど発生させません。さらにこれらの毒素は一度生成されると、100℃で30分間加熱しても分解されない強固な耐熱性を持っています。だからこそ、「変な味がしないから大丈夫」という過信を捨て、調理段階で素手で食材に触れない(エンボス手袋や清潔な菜箸の徹底)、調理器具のアルコール消毒を怠らないという初期の「持ち込ませない対策」が生命線となるのです。