広告の枠組みで圧倒的な実績を重ねる一方で、矢後は個人のアートプロジェクトにも全力を注いでいる。2020年、東京・銀座グラフィックギャラリー(ggg)にて開催された大型個展「合羽橋(Kappabashi)」、そして同時に刊行された大型作品集『Magne』(青幻舎)は、デザイン業界の内外に大きな衝撃を与えた。
銀座グラフィックギャラリー(ggg)での衝撃的プレゼンテーション
個展『合羽橋』では、商業仕事の枠を超えた純粋な造形思考が提示された。タイトルに掲げられた道具街「合羽橋」のように、既製品や日常のオブジェクト、モチーフを一度分解し、自らの視覚言語で再構築する。圧倒的なスケール感で提示されたグラフィック群は、平面作品というよりも、空間そのものを包み込む彫刻のような存在感を放っていた。
作品集『Magne』もまた、単なる「過去の仕事集(ポートフォリオ)」ではない。本というメディア自体をキャンバスと捉え、ページをめくる行為そのものが一つの美術鑑賞体験となるよう細部まで設計されている。商業デザインで培われた「伝える力」と、個人的な「探求心」が高度に交差する地点がここにある。