現代の辞書において、この言葉はどのように位置づけられているのか。言葉のリアルタイムな用例を採録し続ける『三省堂国語辞典』の歴代版を追うと、かつてはもっぱら「幼児語」と分類されていた記述が、次第に「くだけた日常会話で広く用いられる語」へと定義の幅を広げていることがわかる。
著名な言語学者である金田一春彦は、日本語の持つ独特のリズム感や情緒的ニュアンスについて多くの論考を残した。講談社から刊行された数々の新書や学術書でも触れられているように、日本語は同じ対象であっても、文脈や関係性によって「乳房」「胸」「乳」「おっぱい」と細かく呼び分ける豊かな語彙体系を持つ。辞書編纂者たちの繊細な観察眼は、タブー視されがちだった身体語彙が、世代を超えて親しまれる日常語へと昇華していく軌跡を克明に記録している。