静寂の中に響く吐息のような歌声。タイトルである「行かないで」というシンプル極まりない言葉に、どれほど深い哀傷が込められているだろうか。この楽曲の誕生背景には、歴史のうねりと人間の情念が複雑に絡み合っている。
元々はテレビドラマの主題歌として書き下ろされた作品だ。歴史に翻弄された実在の女性の半生を描く重厚な物語と対峙した際、彼が選んだのは装飾を削ぎ落とすことだった。溢れ出る感情を力任せにぶつけるのではなく、押し殺した声の震えで表現する。歌詞が持つ真意とは、引き止められないと分かっていながらもすがりつかずにはいられない、人間の尊厳と脆さの同居に他ならない。