杞憂(きゆう)の意味は、「実際には起こる可能性が極めて低いことに対して、無用な心配や過度な恐れを抱くこと」です。単なる日常の不安ではなく、「客観的に見て全く根拠がない心配事」を指すのが本来のニュアンスとなります。
この言葉のルーツは、古代中国の思想書『列子(れっし)』天瑞篇に記された故事成語「杞人の憂え(きじんのうえ)」にあります。春秋時代の中国に存在した「杞(き)」という小国に、ある男が暮らしていました。彼は毎日、「もし天が崩れ落ちてきたり、大地が崩壊したら逃げ場がないのではないか」と深刻に悩み、食事も喉を通らず、夜も眠れない日々を過ごしていました。
見かねた友人が「天は空気の塊であり、大地は土が固まったものだから崩れる心配はない」と説得し、男はやっと安心したという逸話です。このことから、「客観的に見て絶対にあり得ないことを思い悩む愚かさや無意味な心配」を「杞人の憂え」、転じて「杞憂」と呼ぶようになりました。
現在よく使われる「杞憂に終わる」という慣用句は、「事前に恐れていたような深刻なトラブルや問題が、実際には発生せずに無事解決した」という安堵の状況を表現する定番フレーズです。