私たちがサメに対して極度の恐怖を覚えるようになった背景には、エンターテインメント産業の影響が色濃く影を落としている。1970年代、作家ピーター・ベンチリーの小説を基にスティーヴン・スピルバーグ監督が手がけた大ヒット映画『ジョーズ』は、海に対する人々の潜在的な恐怖を決定づけた。劇中で描かれたパニックホラーの演出は、サメ=人間を狩る恐怖の象徴という固定観念を世界中に植え付けたのだった。
その後も『ロスト・バケーション』のようなサスペンス映画が誕生し、水中の恐怖は映画界の定番ジャンルとして進化を遂げた。一方で、近年ではメディアの描く視点にも大きな変化が見られる。Netflixやディスカバリーチャンネル(特に毎年恒例の「サメ特集」など)では、過度な恐怖心を煽る演出から一歩引き、生物としてのリアルな素顔に迫るドキュメンタリー番組が数多く配信されるようになった。フィクションが作った幻影を剥ぎ取り、ありのままの生態を理解しようとする動きが広がっている。