1960年5月22日、南米チリ南部を襲った1960年チリ地震(バルディビア地震)は、近代地震学の想定を根底から覆した。計測された規模はモーメントマグニチュード(Mw)9.5。これは人類が計器で観測した史上最大の数値であり、地球科学・自然災害の歴史において最も強烈な破壊の爪痕を残した事象として記録されている。
断層の破壊長は約1,000キロメートル、すべり量は20メートル以上にも達した。大地が激しく揺れ動いた時間は10分以上。地盤の沈降や急激な地殻変動によって海岸線は一変し、発生した巨大津波は時速700キロを超える猛スピードで太平洋を横断した。ハワイやフィリピンを飲み込み、約22時間後には地球の裏側に位置する日本の三陸海岸にまで押し寄せ、142名の尊い命を奪った事実は今なお語り継がれている。
かつてナショナル ジオグラフィックの現地調査チームが報じたように、この地震は単一の断層破壊にとどまらず、数日間にわたって周辺の火山活動を誘発し、地球全体の固有振動を数ヶ月間も共鳴させ続けた。地球そのものがひとつの巨大な鐘のように打ち鳴らされた瞬間だった。