二酸化チタン(TiO₂)の最大の特徴は、並外れて高い屈折率にある。光を強力に跳ね返す性質を持ち、わずかな量を混ぜるだけで対象物を鮮やかな純白に変貌させる。隠蔽力に優れ、化学的にも極めて安定しているため、産業界では1世紀以上にわたり重宝されてきた。
日本においてこの物質は、科学史に刻まれる一大ブレイクスルーの主役でもある。1967年、東京大学の大学院生だった藤嶋昭氏と指導教官の本多健一氏によって、水中に沈めた酸化チタン電極に光を照射すると水が酸素と水素に分解される現象が発見された。いわゆる「本多・藤嶋効果」である。
この発見を起点に、光を受けることで強力な酸化力を発揮し、有機物や細菌を分解する光触媒技術が花開いた。ビルの外壁の防汚コーティングや空気清浄機、抗菌タイルなど、環境浄化の切り札として社会のあらゆるインフラを支えている。ただ白く染めるだけの粉末にとどまらず、地球環境をクリーンに保つハイテク素材としての顔も併せ持っているのだ。