実際に譜面台に楽譜を置き、練習を始める奏者に向けて、技術的につまずきやすい三大難所の攻略法を伝授します。
第1の関門は、不気味な半音階で下降・上昇を繰り返す「イントロの分散和音」です。ここでは手首を固めず、指先だけで弾こうとしないことが肝要です。肘から手首を柔らかく回転させるローテーション(回内・回外運動)を意識し、鍵盤の底まで押し込まずに撫でるようなタッチを維持することで、無機質で狂気的な響きを生み出すことができます。
第2の難所は、有名な「サビの跳躍メロディ」です。右手が高音部へ一気に跳ぶ際、視線が追いつかずにミスタッチを誘発しがちです。ここでの運指のコツは、「打鍵した瞬間に次のポジションへ脱力して指を移動させておく(予備動作)」ことです。打鍵の直前に慌てて手を飛ばすのではなく、前の音を離したコンマ数秒の間に次の鍵盤の直上に手を着地させておく空間把握力を養うことで、超高速テンポでもミスタッチは劇的に減少します。
第3の壁は、「左手のオスティナート(執拗な低音反復)とポリリズム」です。右手のメロディのシンコペーション(アクセントの移動)に左手が釣られてしまう現象に対しては、両手練習を即座に中断してください。メトロノームを遅めのテンポに設定し、左手だけで無意識に正確なパルスを刻めるようになるまで自動化させることが、両手を自然に噛み合わせる唯一の近道です。