茶室建築の骨格を今に伝える母屋は、稀代の茶人・千利休が提唱した「侘び寂び」の精神を色濃く宿している。華美な装飾を削ぎ落とし、土壁の質感や窓から差し込む自然光の陰影によって空間を成立させる手法は、訪れる者の心を自然と鎮める。無駄のない所作で茶を点てる店主の姿は、日常の慌ただしさを忘れさせる厳かな気配に満ちている。
この歴史的建造物とその周辺環境に対しては、文化庁も有形文化財としての価値に着目している。失われゆく伝統的な木造建築の意匠を保持し、後世へと伝える文化的拠点としての役割。一服の茶を嗜む行為そのものが、日本の美意識の保存と継承に参加することと同義であると実感させられる。