なぜ早稲田は、デジタル全盛の時代にあえて手描きのデッサン試験を課し続けるのか。その理由は、高等教育・建築教育業界全体が直面している課題と深く結びついている。
現在、建築の実務現場ではCADや生成AIツールが急速に普及している。しかし、コンピューター上で3Dモデルを構築する前段階として、頭の中にある曖昧な空間イメージを「自らの手で紙に描き出し、他者に伝える能力」こそが、建築家の本質的な創造力だからだ。
この実技試験で磨かれる空間把握能力と構成美の感覚は、大学入学後のアトリエ設計演習はもちろん、将来の「一級建築士資格試験」における製図試験の土台ともなる。手と頭を連動させて空間を紡ぎ出す体験は、単なる受験対策を超えて、生涯にわたる建築家としての血肉となっていく。