ミラノやヴェネツィアの広場を染め上げる鮮烈なサンセットオレンジのグラス。製造元である伊カンパリグループの財務報告でも、アペロールはグループ全体の売上を力強く牽引する世界的トップブランドとして報告され続けています。かつてイタリア北東部ヴェネト州のローカルな食前酒であったこのカクテルが、なぜこれほどまでに国境を越えて愛されているのでしょうか。
アペロールスプリッツ人気の理由を紐解くと、現代の飲酒トレンドである「ソーバーキュリアス」や低アルコール(Low-ABV)へのシフトが見事に合致した点が挙げられます。一般的なワインのアルコール度数が12〜14%、ウイスキーのハイボールが約8〜9%であるのに対し、ベースとなるリキュールであるアペロール度数はわずか11%に抑えられています。
これをスパークリングワインと少量のソーダで割って仕上げるため、完成したカクテルのアルコール度数はおよそ7〜8%程度に落ち着きます。ビールの軽快さとスパークリングワインの特別感を両立し、平日の夕方から口にしても翌日に響きにくい「ちょうどいい酔い心地」が、多忙な現代人のリラクゼーション欲求に完璧にフィットしました。
さらに、夕食前のひとときを軽食と軽快な酒で楽しむイタリアの伝統的社交習慣「アペリティーボ」の価値観が、仕事と私生活の境界線を曖昧にしがちなリモートワーク世代の「オン・オフの切り替えスイッチ」として心理的にも機能しています。